Never stop dreaming


夢見る勇気を貰える SUPERな男の自叙伝を読んだ

2013年2月4日一人の写真家が逮捕された。
罪状は刑法175条 わいせつ物頒布の罪

「アート」と「わいせつ物」の境界線に関する
社会秩序と表現自由の問題

クリエイターの表現する「リスペクト」「美」「考え」を
どこまで社会が許容するかの問題

がそこにはあった。

その答えはこの本を読んだ人が考える事であるが

結局3日拘留され略式起訴として終わったこの一件をプロローグとして
物語は始まる

『SUPERな写真家』レスリー・キー著 朝日新聞社

SUPERな写真家 (ideaink 〈アイデアインク〉)

それほど文字数のある書籍ではなく
しかも非常に読みやすい文体なので一気に読めるも
ひとことでは語りつくせぬ内容だった

不思議と爽やかな読後感に包まれて
衝動的に書評を書きたくなってしまったので
いくつかポイントで紹介したい。

◆立身出世一代記としてSUPER
シンガポールの貧民街で生まれ
信じがたい過酷な少年時代を過ごした何も持たない若者が
夜間学校に行きながら
勤めた先の工場で出会った「夢の国」日本

その国に憧れながら働いた貯金を持って
来日し、写真家を目指し
ニューヨークのコマーシャルフォトシーンで格闘するまで
出世していく物語は非常にエキサイティング。
ど根性であり「おしん」の世界である。

◆脅威的な行動力が実現してきた実績がSUPER
度肝を抜く企画力とバカか思われるような行動力で
普通を超えて(super)行く
借金を抱えてでもやる。その思考回路が開示される。
スーパーポジティブ、冒険心に満ち溢れている

◆日本への視点 アジアの視点がSUPER
『Lost in translation』
彼はソフィアコッポラの映画を引き合いに出して
まなざしの角度、切り口の違いがどのように生まれるのか
について言及している。

アジアの力、日本の魅力をどう引き出すかの
ヒントが描かれている。

◆DIY精神がSUPER
不遇の時期を経てあるときチャンスに恵まれ売れっ子になり
日本を引き払いNYに進出する。

しかしそこで
アメリカの現場でアジア系が
やっていく事の苦労と直面する

そこから凄いのが日本に戻り
みずからの資金で雑誌を刊行するアプローチを取る。

コマーシャルフォトグラファーとして
媒体の仕事をしつつ
自らが発行人となり
クリエイティブディレクターを務める
「SUPERシリーズ」を出してしまう

SUPER MIYUKI MATSUDA

自ら出版するという体制については
ブルースウェーバーやアンディウォーホールが
念頭にあったという事だが

リスクを取り、貫くことで生まれる価値の
重要性を紹介している。

 

◆人はだれでもマイノリティになる

一番印象に残ったくだりは以下引用です

人がマイノリティになるときそこには世界を変える大きな可能性が生まれます。
(中略)
完全アウェイのど真ん中に飛び込むのはとても怖い。
罵倒、差別、嘲笑、誰もそんなものは受けたくはありません。
でもだからこそ、
「マイノリティの中に入っていく覚悟があるか」
という問いかけは、本当に自分がそれをしたいのかどうかを
判断する一番の基準になります。
「こんなことしたら人に馬鹿にされるかも」
と覚悟を持てないなら、
その夢はあなたにとって切実ではなかったのかもしれない。
逆に、苦痛にまみれた未来が見えてもなお成し遂げたいと願うなら、
それはとてもピュアな感情だと僕は思います。

人を動かすのは、この情熱から生まれ出るものだけです。

あなたにどうしても実現したいことがあるなら、
どうかマイノリティになることを怖がらないでください。

P172 『Superな写真家』より引用

爽やかで明朗な文体が伝えるメッセージがまるでシャッターを切るように今の日本を写し出す1冊お薦めです。

 

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